探偵ブログ

探偵の列島巡り 第2話

探偵の仕事の中でも、もっとも地味な聞き取りという仕事が私の役目です。

聞き取り担当は日本各地様々なところに出向いて仕事をしますが、近頃は人口数万人規模の町になりますとどこにでも見られる金太郎飴的景色が目につきます。

せっかく遠路はるばるやって来たのに、ここは我が都かと勘違いしテンションも下がり気味の味気ない思いで調査に取りかかりますと、その味気ない思いは一辺に吹き飛びます。言葉が分からないのです。元々、努力というか勉強が嫌いで外国語はおろか国語の勉強さえも疎かにしてきた私ですが、まさかこんなところでつけが回ってこようとは。関西弁などはテレビで毎日のように耳にするので、違和感はありません。ところが、同じ日本語なのに意味の通じないところがあるのです。近いところでは山陰出雲地方のずうずう弁、遠くは薩摩地方など。沖縄辺りになると始めから終わりまでさっぱり分からないことがあります。せっかく私のために一生懸命話して下さっているのに、こちらはチンプンカンプンただ曖昧
に頷くだけです。仕事としては完璧赤点不合格です。でも地方独特の訛りを聞くと妙な安心感といいますか親近感を覚えます。とりあえず仕事を終え取り急ぎ地元専門の居酒屋などに入り喉を潤していますと、そこはもう訛りのオンパレード。ある種民族音楽のリズムにも似た不思議な心地よさを覚えます。方言、訛りの洪水の中、一人寂しく食べていますと、世話焼きの地元客が訛りの入り混じった標準語で声を掛けてきます。私はこうこうで仕事が上手くいかなかったと、ちょっと広島弁が入った標準語で答えますと、心得たといわんばかりの顔つきで更に私のそばに寄って来ます。そして二カ国語放送ならぬ方言を標準語に直し事細かに説明してくれます。一方の私は、これでなんとか自分の役目を果たすことが出来たと、ほっとすると同時に、学校の勉強だけが勉強じゃないぞ、人間関係を築くのも立派な勉強だと、一人、悦な気分に浸ります。そうしてまた懲りもせず別の場所で赤点を取り続けてしまう私です。

探偵の列島巡り

探偵には様々な事案がございますが、同時に日本列島色々な所に連れて行ってくれたりもします。

私の主な役割は現地に出向いて見たり聞いたりする聞き取り取材という仕事なので、市中は勿論、人家も疎らな山間部など、普段旅行などではとても行けないようなところが調査場所となります。

一日にフェリーが数便しか通わないような離島や人里離れた秘境のような山の奥まで。ようやくたどり着いた、見知らぬ土地で不安にかられながら見知らぬ人から話を聞かなければならないものですから、相手が優しい人でありますよう毎回手を合わせながら恐る恐る玄関の扉を叩きます。

そうして現れた人は皆、一様に優しい方ばかりです。私が初めての土地であたふたと右も左も判らずにまごついていることを察知してか、皆さん誰もが私を同情してくれます。私の様子を見るに見かねたか、仕事の話はそっちのけで、「お昼は食べたのか」とか、「今日は泊まるところはあるのか」とか、何かと気遣ってくれます。

これではどちらがインタビュアーか分かりません。「まあ上がってお茶でも飲んで…」などはざらで、中には帰り際に「お腹が空くから持って行きなさい」と、おにぎりや採れたての野菜を包んでくれる事もあります。

私はその優しさに感激して、聞きたいことは山ほどあったのに何も一つも聞けず、気がつけば山ほどのお土産を手にしています。

帰る道すがら、いったい私は何のためにわざわざこんなところまで来たのだろうと、我が身の不甲斐なさに落胆しながらも、でもやっぱり来て良かったなあという複雑な思いで山里を下りていきます。このようにして人様の温かい情に触れながら各地を廻る仕事を随分私は気に入っています。

でもその割には、ご心配して頂いたり、同情されてばかりいるようですから、まだまだ探偵としての修行が足りないのかもしれません。

でも唯一の救いは今までに一度も門前払いされたことがないということでしょうか。

そして、取材に協力していただいた方にお礼の便りを出したりしますが、折り返しさらに詳しく教えて下さることもあります。私の列島巡りの修行はまだまだ続きそうです。

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